難民、被災、貧困など、 非日常の子育てから見えてくる子どもの存在とは?フォトジャーナリストとして世界を巡り、 様々な状況に置かれた子どもたちと向きあう安田菜津紀さんにお話を伺います。
安田 菜津紀 さん
フォトジャーナリストとして、カンボジアを中心に東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で主に貧困や被災、難民の子どもたちを対象に取材活動を行う。現在はシリア難民キャンプ、東日本大震災以降は被災地の陸前高田市をメインに活動。2012年「HIVと共に生まれる -ウガンダのエイズ孤児たち-」で第8回名取洋之助写真賞受賞。著書に写真絵本「それでも、海へ―陸前高田に生きる―」(ポプラ社)など。TBS「サンデーモーニング」にレギュラーコメンテーターとして出演中。
世界中の親子を取材する中で どのようなことを感じますか?
特にシリアやカンボジアで感じるのは、家族の定義がものすごく広いということです。一軒の家にたくさんの子どもがいて「みんな、お母さんの子?」と訊くと「これはうちの子、隣の子、えーと、この子は誰だっけ?」なんてしょっちゅう(笑)。
血縁に関係なく、みんなが家族のようにつながりあう中で、大人も子どもたちも心が満たされているんです。
一方、核家族化が進む日本でも、自分のまわりから家族の定義を広げていくことは可能だと思うんです。
私の場合、たとえばタクシーの運転手さんと「おじさん訛りありますね、出身はどこ?」「岩手だよ」とか、どこでも、知らない人でも、親戚のおじさん、おばさんと話すみたいにおしゃべりして仲良くなっちゃう。
ママも、困った時は遠慮しないで「助けて」とまわりの人に声をかけてみると、そこから家族や親戚みたいな人を増やしていけるんじゃないかなって。要は自分自身の心の持ち方で、他人を他人ではなく家族のように感じ、人とつながりやすくなると思うんです。
人とつながると「一人じゃない」って安心できるし、一人よりもずっとハッピーに過ごせると思いますよ。
取材を通して見えてくる 「子ども」とは どんな存在ですか?
私は、子どもは大人を支えてくれる存在だと思うのです。忘れられないのは、東日本大震災直後の被災した町で、入学式の写真を撮るお手伝いをした時のこと。
保護者代表の方が、たった2人の新入生に向けた「2人の命は、この町みんなの宝です」という言葉に、私は気づかされたんです。被災地や難民キャンプといった過酷な状況でも、守るべき子どもがいるから大人たちは耐えられる、未来へ向いていけるのだと。
日常においても同じで、子育てに悩むことはあっても、大人は日々、子どもから幸せな瞬間をたくさん受け取っているんじゃないかなって。
子どもの笑顔、成長、子どもの存在そのものが、私たち大人みんなの、かけがえない宝物なんだと思います。
東北の被災地では、震災時に小学生だった子どもたちが、今は中学生。非日常で育った子どもたちが、どんな社会を築いていくのか。子どもたちの未来を見届けていきたいと思います。
ママたちにエールをお願いします
私は16歳の時に「国境なき子どもたち」のプログラムでカンボジアを訪れ、人身売買の被害を受けた子どもたちと出会いました。
それまで遠い世界と思っていた問題が急速に、今、目の前にいる「私の友達が抱える問題」となって、この子たちのために何とかしたいと強く思ったのです。
その体験が、今の活動の原点となっています。
私の母は、危険だからといって仕事を反対したことは一度もありません。
母は私を心配する以上に、信頼してくれたから、自分の可能性を広げることができたのです。
親御さんには、子どもを信じてあげてほしいなと思います。子どもは親の心配や愛情を受けとめて、自分の道をしっかりと歩んでいくと思いますよ。