子どもの主体性を育むには、周囲のどのようなサポートが必要でしょうか?
乳幼児の新しい学びの教育プログラム、「ラーニング・ジャーニー」を推進する 堀 昌浩さんにお話を伺います。
堀 昌浩 さん
ラーニング・ジャーニー代表。さくら保育園園長。社会福祉法人日本保育協会関東ブロック青年部長。
ラーニング・ジャーニーとは どのようなものでしょうか?
子どもの「遊びと学び」に大人がサポーターとして参加することで、子どもの可能性を大きく引き出していくプログラムです。
特徴は、子どもの「夢」や「願い」から出発すること、「本物」から学ぶこと。そのために保護者、地域社会、企業を積極的に巻き込みます。たとえば、洋服をつくってみたいとなって、実際にファッションデザイナーの方に学ぶケースもあります。
子どもに対する保護者の影響力はとても大きく、保護者の意向が過度に反映されると、無気力、当事者意識が乏しいなど主体性に欠ける子どもになってしまいます。そこで、子ども本来の能力を伸ばしていこうと始めたのが、この取り組みなのです。
ラーニング・ジャーニーには決められたカリキュラムはありません。すべては、子どもが感じたまま素直に発する「つぶやき」から始まります。
たとえば、子どもが「新幹線が見たいなぁ」とつぶやいたら、「じゃあ、見に行ってみようか」と子どもの興味の赴くまま自由に展開していきます。主役は子ども。大人の役割は、子どものつぶやきを受けてその先に広がるように仕向け、豊かな学びの場をつくることです。
子どもの主体性を育むには どうすればいいでしょうか?
ゴールよりもプロセスを大切にすることです。
私の園では、子どもたちがゼロからカレーをつくるプログラムを行いました。「うちのカレーおいしいんだよ」から始まり、「どんなカレーにする?」と実験みたいにスパイスを調合したり、みんなのお家の「魔法の味」を調べたり。
子どもたちが主体となり本気で取り組むと、カレー粉メーカーやスーパーの店員さんなど協力者が増えていきました。
その中で子どもたちは、無駄な買い物をしていたのが、必要量を買うようになったり、友達同士で意見をまとめられるようになったりと、みるみる成長して大人が驚くほど。
失敗も楽しみながら、みんなでつくりあげていく過程で、子どもたちは解決力、創造性、協調性など多くを学び、受け身ではなく主体的に生きる力を身につけていくのです。
大人の世界では、なぜするのか、成果はあるのかなど、まず意図や目的を求められます。しかし、それだけでは広がりはなく、無から有を生み出す豊かな発想力を育むことはできません。
どんな状況でも、やりたいことや楽しみを見出せる、生きる力のある大人になってほしい。それには私たち大人が、子どもたちが思いのまま伸び伸びと遊んで学べる場、創造的に生きる楽しさを体験できる場をつくることが大切だと思います。
ママたちにエールをお願いします
子どもの何気ない「つぶやき」を大切にしてほしいなと思います。それに、子どもには「経験」も必要。経験には「させる」と「する」の2種類があります。「させる」はマナーなどの躾、「する」は未来を切り開くための主体的な経験です。
予定や計画も大切だけど、時にはのんびり子どもの好奇心に付き合ってみましょう。思わぬ発見や成長する姿、それに、たくさんの笑いと感動に出会うことができますよ。
(※この記事は2016年6月号クルールに掲載した記事に加筆修正したものです。)