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子どもは自分で道を見つける いい塩梅の距離で見守って【きかせて、子そだて】

帝京大学理工学部准教授の平澤孝枝さんは、マウスを使って「子育て環境におけるストレスが、どう脳の発達に影響するか」を研究しながら、息子を育てています。「研究でどんなことがわかるの?」「自身の子育てに生きた部分はある?」「どうして研究者になったの?」など、お話を聞きました。

“保育園”で育ったマウスは母子分離の影響があまりない

「脳がどのように発達していくのか」に興味を持って、主にマウスを使った研究をしています。

たとえば、「母子分離」は大きなテーマ。マウスの赤ちゃんは、人間と同じようにお母さんのおっぱいを飲んで育つのですが、「1日1時間くらいお母さんと離して別のケージに入れ、また戻すことを1週間続けたマウスの赤ちゃんは、成長して大人になった後、ストレスへの耐性が低くなった」という実験結果が出ました。

というと、私と同じように、子どもと離れて仕事をしている保護者はドキッとするかもしれません。でも、ちょっと待ってください。赤ちゃんマウスを母親から離す間、赤ちゃんを子育てが上手な個体と一緒のケージに入れておいたケースでは、成長後の脳機能への影響はほとんどなかったのです。いわば“保育園”ですね。

そもそもマウスの赤ちゃんが母親を認識しているかどうかはわからず、実は「普段くっついている母親から離されたことで体温が下がり、代謝に影響が出た」という可能性もあるので、そのまま人間に当てはめないでくださいね。

ただし、「胎児期や赤ちゃんの頃、母親や本人が飢餓状態にあると、大人になってから生活習慣病や心疾患にかかりやすくなる」ことは、過去の飢饉などの研究から疫学的に裏付けられています。

“遠くの親戚より近くの他人”単身の子育ては綱渡りの連続

こんな研究をしていると、「自分の子育てにも熱心」と思われがちですが、だいたいの人よりいい加減な子育てだったと思います。

息子は一人っ子なのですが、初めての子育てはわからないことだらけ。当時は「1歳になったら卒乳を検討」と言われていた頃でしたが、「卒乳のしかた」も本はいっぱい読んだのに、結局どの本を信じていいかわからず、面倒になって自然に任せてしまいました。

息子が小さかった頃は、仕事の都合で夫とは離れて住み、会えるのは週末だけ。両実家は遠方です。そんな毎日で感じたのは、“遠くの親戚より近くの他人”。理解ある上司や周囲のおかげで、職場内の保育園に迎えに行った後は、息子を研究室に連れてきて、自分が実験している間に他の人が遊んでくれて、とても助かりました。今の職場も、いろいろと配慮してくれて、ありがたいですね。

高校は文系、卒業後は普通に就職する予定だった大学時代

現在、私は、女子の理工系進学を促進する自治体の科学講座に協力もしているのですが、私自身は高校では文系選択だったんです。たまたま受かった大学が生物系の学部でしたが、卒業したら普通にお勤めするつもりでした。それが、4年生時の卒業研究で「研究って面白いな」となって大学院に進学し、そのまま研究を続けてきて今に至ります。

子ども向けの科学講座を自分で運営しておいておかしいのですが、私自身は息子に対して特に科学教育はしていないんです。親子で一緒に参加できる時期は貴重なので、もし興味があったらぜひ講座など参加してみてほしいのですが、無理はしないで大丈夫。私自身もそうでしたし、息子も高校に入ってから宇宙や音楽に興味が出てきたそうです。星を一緒に見に行ったことや、楽器の習いごとをさせたことなんてないのですが。

「大学の先生」としての立場からいうと、進路は大学に入ってから考える、でいいと思います。大学4年間は、「自分ってどんな人間なんだろう」「世の中ってどうなっているんだろう」と見たり経験したりできる大切な時期。子どもは自分でちゃんと考えて決められますから、いい塩梅の距離で見守ってほしいな、と思います。


「哲学対話」ワークショップ

平澤さんをはじめ、帝京大学の教員有志がファシリテーターとして運営する「哲学対話」は、道徳の授業とは違い、普段当然だと思っている内容などをグループで話し合うことで、今までとは違った視点を見出す時間。たとえば、小学生なら、テーマは「お手伝いは必要?」「学校は何のためにある?」など。小・中学生から職場や保護者まで、さまざまなグループで開催可。

平澤 孝枝さん

帝京大学理工学部バイオサイエンス学科准教授。1999年日本女子大学大学院博士後期課程卒業。学術博士。国立精神・神経医療研究センター博士研究員を経て、2005年より山梨大学医学部助教、2014年より現職。高2の息子がいる。研究テーマは、「胎児や赤ちゃんの脳がストレスでどんな影響を受けるか」など。最近は「ニホンウナギの雄雌はどう決まるか」といった研究も。

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