子育て

「こんなに小さくても、サルじゃなくてヒトなんだ」娘に初めて感じた「ヒトらしさ」【コソダテ進化論】

ボルネオ島の熱帯雨林で、長年オランウータンの研究をしていた、久世濃子さん。そんな久世さん自身が2児のママになり、見えてきたものとは?サルの研究を通して、「ヒトの子育て」を考える連載です。

娘が差し出してくれた離乳食

前回、「ヒトは食べ物を分かちあう珍しいサルだ」というお話をしました。

私が娘を育てていて、最初に娘の中に「ヒトらしさ」を感じたのは、自分が食べていた離乳食を、私にくれたときでした。

子育て中の親にとっては当たり前の光景ですが、サルが他の個体に食べ物を分け与えることはほとんどない、と知っている私にとっては、「こんなに小さくても食べ物をあげられるなんて、やっぱりサルじゃなくてヒトなんだなぁ」と実感した瞬間でした。

娘にとってはあまり好きではない食べ物を「処理」しただけかもしれませんが、食への執着が強いサルでは、食べきれないほどたくさんの食べ物があっても、他の個体に差し出すことはありません。

「一緒に食事をする」は、ヒトとサルを分ける重要な特徴

その後にも、車で移動中に車内で娘にパンを食べさせていたら「はいどうぞ」と娘が夫と私にパンをさしだした様子を見て、「一緒に食べ物を食べたいなんてヒトらしいことを、こんな小さな頃からできるのか!」とちょっとびっくりしました。

皆さんも今度動物園でサルを見る機会があったら、よく見てみてください。

サルは一斉に餌を食べているときも一頭、一頭バラバラで食べています(母子でも)。人間だったら、家族や仲の良い人同士で集まって食べますよね。

「(顔をつきあわせて)一緒に食事をする」というのは人間とサルを分ける、とても重要な特徴の一つなのです。

私たちヒトにとっては、食事は単に栄養補給という意味だけでなく、社会的な意味をもつ行動です。赤ちゃんに離乳食を食べさせるときに、「一人で食べさせるのではなく大人も一緒に食べるようにしましょう」と言われますよね。

私たちヒトには、「人と一緒に食事をしたい」という欲求が生まれながらにして備わっているのです。

赤ちゃんであっても、一人で食べるよりは家族や親しい人たちと一緒に食べる方が、ずっと食事を楽しめるのだと思います。

※この記事は、2011年4月~2013年3月に「つくば自然育児の会」会報に連載された「サル的子育て」に加筆修正したものです。

久世 濃子さん

1976年生まれ。2005年に東京工業大学生命理工学研究科博士課程を修了。博士(理学)、NPO法人日本オランウータン・リサーチセンター理事。著書に「オランウータン~森の哲人は子育ての達人」(東京大学出版会)、2021年度青少年読書感想文全国コンクール課題図書「オランウータンに会いたい」(あかね書房)など。

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