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恐竜のパパとママは協力して 子育てしたかもしれません【きかせて、子そだて】

「恐竜も子育てしたの?」恐竜の繁殖や子育てを研究し、恐竜の卵化石を探して世界中を飛び回る田中 康平さん。人間の子育てと恐竜の子育て、どこが違ってどこが同じ?恐竜の研究の面白さって?田中さん自身の子どもの頃のお話も聞きました。

「父親が抱卵する」という 効率的な子育てをした恐竜

人間も含めて、生き物はすべて「子どもを産む」ということに大きなエネルギーを使っています。それは、恐竜も同じ。産んだ卵を自分で温める恐竜もいれば、産みっぱなしでそのままの恐竜もいたことがわかってきていますが、たくさんの卵を産むのは、恐竜のお母さんにとっても大変なこと。消耗し、疲労困憊したでしょう。

オヴィラプトルという恐竜を知っていますか?オヴィラプトルとは「卵泥棒」という意味。化石が卵の化石と一緒に見つかったので、卵を盗む恐竜と思われ、その名が付きました。

ところが、その後の発見から卵はオヴィラプトル(の仲間)のものだとわかりました。つまり、オヴィラプトルは卵泥棒ではなく、自身の卵を温めていたのです。さらに、最近になって、オヴィラプトルはオスが抱卵したこともわかってきました。

ということは、「卵を産んで消耗した母親に代わり、父親が抱卵する」という効率的な子育てをしていたことになります。その間に母親は餌を食べに行ったのかもしれないし、交代で卵を温めた可能性もあります。恐竜のオスだって、子育てをしていたんですね。

ここでいう「子育て」とは「抱卵」のこと。卵が孵ってからのことはまだわかっておらず、今後の研究課題ですね。

謎があるから面白い 「恐竜の生き様」を解明したい

子どもの頃から、恐竜はもちろん昆虫など生き物が大好きでした。家族で山に登って植物をスケッチしたり、小学校高学年の時は友達と毎週のように科学館に通っていましたね。中学生からは天体写真にはまって、愛読書は天体望遠鏡のカタログ。その他の本はあまり読まなかったので、今は研究でたくさんの恐竜の論文を読まなければならず、大変です(笑)。

恐竜の研究というと、「外国の砂漠で新種の恐竜化石を発掘する」というイメージがありますよね?でも、それだけじゃありません。「恐竜はどんな風に生きていたのか」を解き明かしたくて、博物館に収蔵された標本を詳しく調べたり、論文を読み込んだりもしています。タイムマシンがない限り、「本当の恐竜の生活」はわかりません。でも、そこをほんの少しの手がかりから調べる面白さがあるんです。ぜひ「恐竜の生き様」を解き明かしたいですね。

恐竜研究はこれから ぜひ「好き」を追求して

恐竜の謎はまだまだ残っています。というより一つ謎が解決すると、同時に新たな謎がたくさん生まれます。最近では、化石をCTスキャンで分析したり、ドローンを飛ばして発掘現場のデータを取ったりしています。新しい技術で今後も研究は進んでいくでしょう。

恐竜が好きな子どもの皆さん、恐竜研究はこれからですよ。私たち現在の恐竜学者が言っていることだって、実は間違っているかもしれません。ぜひ恐竜の謎を解き明かしてくださいね。

恐竜学者は止まらない! 読み解け、卵化石ミステリー

恐竜の研究って何をするの?研究するとどんなことがわかるの?そんな疑問に、田中さん自身が恐竜学者を目指して奮闘した体験を通して答える本。次から次へと出てくる謎、探偵のような地道な調査と積み上がるデータ、そしてついに解き明かされた謎!「恐竜の卵」研究の面白さを追体験できます。

出版社:創元社 著:田中 康平

田中 康平さん

1985年生まれ。2008年北海道大学理学部卒業。2017年カルガリー大学地球科学科修了。現在、筑波大学生命環境系助教。主な著書に『恐竜の教科書』(共監訳、創元社)、『恐竜と古代の生き物図鑑』(監訳、創元社)、『恐竜研究の最前線』(共監訳、創元社)などがある。NHKラジオ「子ども科学電話相談」の回答者としても活躍中。

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