筑波大学教授の徳田克己先生が、ママの子育てに関する悩みに答えてくれるコーナー。
親の不安で追い詰めないように
子どもの成長を信じて見守って
「うちの子はまだお箸をうまく使えない」「トイレに失敗したらどうしよう…」「お友達とうまく遊べないかも…」お子さんが入園する際の、パパやママの心配は尽きません。
でも、入園の時点で何もかも自立している子どもはいません。そのことは園の先生たちはよく知っています。そして園に通い始めたら、ほとんどの子どもが、トイレも、お箸も、お着替えも、みるみるうちに上手になることも、先生たちはわかっています。ところが、「うちの子だけができなかったらどうしよう…」と不安になり、家庭でお箸やトイレの特訓をするお母さんをよく見かけます。子どもは叱られて、へとへとになっています。
また、帰宅した子どもに「今日は何をしたの?ちゃんとできた?」と捜査官のように問い詰めるお母さんもいます。子どもは正直に話すと叱られるので、無口になるか、うそをつくようになります。
特訓をするお母さんも、問い詰めるお母さんも、実は強く不安を感じているのはお母さん自身です。その不安を解消するために、子どもにプレッシャーを与えるのですが、そのうちに多くの場合、子どもも不安になっていきます。お母さんの不安が子どもに移るのです。
園は子どもの「初めての世界」
先生を信頼して任せよう
幼稚園や保育園は、お母さんやお父さんがいない中で過ごす、子どもにとっての「初めての世界」。でも、そこで生活するから自立の心が生まれ育つのです。戸惑ったり、うまくできなくて泣くこともたくさんありますが、そういう経験をするからこそ、「次はがんばるぞ」と思えるのです。
そして、園の先生は子どもを導くプロ。子どものぶつかった困惑や失敗を糧にして、さらに成長できるようにリードしてくれます。先生を信頼して任せてください。
そこで親が自分が不安だからといって、あれこれ手を出していると、子どもは「困っても、失敗しても、ママやパパが何とかしてくれる」と思い、困惑や失敗を成長のもとにすることができなくなります。子どもの成長を親が邪魔しているようなものです。これでは、新しい世界でいろいろな体験をする意義が全くなくなります。
どうかお子さんを見守ってください。そして励ましてください。細かく教え込むのではなく、「ママは、あなたが上手にできるように応援しているよ」と言ってあげてください。それが、「我が子を信じる」ということなんです。
漫画・イラスト:國友裕