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ワクチンに不安を感じる日本人【Dr.村中璃子のからだノート】

子育ては24時間365日のオンコール。「病気だって休めない」あなたと、 あなたの大切な家族を守るため、医療や健康にまつわる知識を身につけよう。

 

子どもにワクチンを 接種させない日本人は7%

今年6月、イギリスの医療系財団が、世界140カ国14万人を対象に行った「反ワクチン度調査」のレポートを発表しました。
1位になったのはフランスでした。「ワクチンは安全ですか?」というシンプルな質問に、「いいえ」と答えた人は33%。オーガニックのお店や商品が多いことからもわかるように、フランスでは人工的なものより自然のものを求める傾向が強いからかもしれません。
ただ「子どもにワクチンを接種させていますか?」という質問に対しては92%が「はい」と回答。これは世界平均の91%を上回る数字です。
一方の日本は、同じ質問に「いいえ」と答えた親が、7%もいました(「はい」「いいえ」のほかに「無回答」もあるので、フランス人の8%が「いいえ」と答えたわけではありません)。これは、先進国中ではオーストリアの8%に次いで世界第2位、という数字です。

この結果について同レポートは、「日本では最近、(科学的には安全性が確認されたワクチンだが、脳神経障害を起こすと一部の主張がある)子宮頸がんワクチン問題が、ワクチンに関する信頼を減少させている。近年の風疹や麻疹流行も、20年来のワクチン(接種を徹底させない)政策の不備によるもの」と、コメントしています。

広がる“ワクチンへの不安”は 世界的な、健康への脅威

今年1月、世界保健機関(WHO)は「国際保健上の脅威トップ10」の1つに、 “ワクチンへの不安”を挙げました。
“ワクチンへの不安”は、「ワクチンが手に入る状況にありながらも、ワクチン接種を控えたり拒否したりすること」と定義されています。
エボラ出血熱、インフルエンザのパンデミックなどの明らかな脅威と並んで“ワクチンへの不安”が挙げられたのは、史上初めてのことでした。

背景にあるのは、この10年で最悪ペースで拡大を続けている、世界的な麻疹の流行です。
WHOは、背景には複合的な事情があるとしたうえで、原因はワクチンへの不安に伴うワクチン接種率の低下であるとしました。
また、「2019年は特に反ワクチン運動対策に取り組むことで、子宮頸がんの撲滅を目指す」としています。

ちなみに、2016年発表の世界67カ国6万6千人を対象とした調査では、ワクチンの安全性に不安を持つ人の世界平均は12%。
第1位はフランスで41%、続いてボスニア・ヘルツェゴビナで28%、モンゴルで27%、その次が日本、ギリシャ、ウクライナの25%という結果でした。
つまり、日本は先進国中、フランスに次いで世界第2位だったのです。

最先端の科学と世界最高の医療制度を誇る日本が、反ワクチン度数の上位に来ていることに改めて驚く人もいることでしょう。
ワクチンの普及と抗生物質・抗ウイルス薬などの開発により、感染症で命や健康を失う人を目にする機会が減ったことが、この皮肉な結果の原因です。
今回の調査でも前回の調査でも、反ワクチン度が高かったのはヨーロッパ・アメリカなどの先進国、低かったのはアフリカやアジアなどの貧しく医療の整っていない地域でした。

健康的な食品で得られる 「免疫力」は、「歩」程度

先ほど、フランスでは自然志向が強いと書きましたが、日本にも江戸時代から、節制と人間のもつ本来の生命力を活性化することで健康を目指す「養生」という考え方がありました。
しかし、菜食やオーガニック食品で得られる「免疫力」と、ワクチンで得られる「免疫力」は、将棋で言えば飛車角と歩兵くらい違います。
健康にいいとされる食品には、「最近、何だか体の調子がいい」という、よくテレビCMで耳にするような状態を手助けする効果はあるかもしれませんが、特定の病原体をターゲットにして攻撃し、命を脅かす病気の発症や重症化を防ぐ効果はありません。

体によい生活習慣や食生活は、健康を保つための基本です。健康的な生活習慣や食生活で体調を整えることと、ワクチンで病気から体を守ることは両立します。
誤った情報に惑わされず、両方をしっかり取り入れて、自分と家族の健康を守りましょう。

村中 璃子さん

医師・ジャーナリスト。京都大学医学研究科非常勤講師。世界保健機構(WHO)を経て、メディアへの執筆を始める。2017年、ジョン・マドックス賞受賞。著書『10万個の子宮』(平凡社)。

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