男の子も女の子も、のびのびと育ってほしい――。 そう思いながらも、子どもを「男の子/女の子だから」と、 知らず知らずに縛りつけていることはありませんか? 性別にとらわれない子育てについて、 ジャーナリストの治部れんげさんにお話を伺います。
治部 れんげ さん
ジェンダー平等について発信するジャーナリスト。元経済誌記者で、2006~07年ミシガン大学フルブライト客員研究員として渡米し、アメリカの共働き家庭を調査。現在は女性のエンパワーメントをテーマに執筆、講演等を行う。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。小学4年生と小学1年生の兄妹の母。
子どもへの対応に男女差を 感じ、違和感を覚えることは ありますか?
時代とともに男女平等への意識が高まり、今は幼稚園・保育園、小学校でも性別による不平等感は薄らいできていますが、それでもまだ「ちょっとおかしいのでは?」と思う部分は残っています。
たとえば先日、小学4年生の息子が「男の子が女の子を泣かせると、みんなから責められる。先にちょっかいを出してきたのは女の子の方なのに、男が悪者扱いされるのは不公平だよ」と言うのに、私も「なるほどな」と思いました。
女の子が男の子をからかっていじめることもあるのに、「男の子はやんちゃ/女の子は弱いもの」という偏見で判断されたら、子どもは不満に思いますよね。
みなさんも「男の子は女の子を叩いたり、泣かせたりしちゃダメだよ」「やさしい女の子は人に好かれるよ」などと子どもに言うことはありませんか?
もしかしたら、親も無意識に「男だから/女だから」と、子どもに押しつけていることがあるかもしれません。
そのような押しつけは、子どもにどう影響するでしょうか?
「男だから/女だから」と決めつけられたら、子どもの可能性は狭められてしまいます。親も、「父親は仕事を最優先すべき」「母親が家事育児をすべき」などと押しつけられたら窮屈に思うように、子どもも本人の意思に反することを押しつけられたら、生きづらさを感じるでしょう。
大事なのは、「〇〇だから」にとらわれないで、その子が持つ能力を発揮できること。自分が心からやりたいと思うことを、自分自身で選んでいけることです。
どんな人生でも「自分が選んだ」と思えたら、現状に満足してハッピーに生きやすいし、逆境でもポジティブに対処していけます。そういう人はまわりからも応援されて、ますます力を発揮していくことができると思いますよ。
男の子も女の子も、伸び伸びと 育てるコツを教えてください
「男だから/女だからできない、しなくていい」などと、親が決めつけないようにしましょう。お手伝いも、男女の分け隔てなく教えるといいと思います。個人差はあっても、たいていのことは性別にかかわりなくできるし、そもそも家事は、生きるために必要な生活スキル。男女問わず、できた方がいいと思いますよ。
もう一つおすすめは、世の中のおかしいことについて、親子で話してみること。わが家では「電車の中にお酒の広告が多すぎ。子どもも見るのにおかしい(息子)」「名簿はいつも男子が先で、女子が後。不平等だよ(娘)」といった具合に、日常生活で変だと思うことに、親子で面白おかしくツッコミを入れています。
世の中で当たり前とされていることが、正しいとは限りません。普段から「これは変じゃない?」「こうした方がいいと思う」と気軽に意見を言い合うことで、子どもたちが世の中の現状に流されてしまうのではなく、おかしいことには「おかしい」と、声をあげられるようになってほしいなと思っています。
お互いに意見を交換し合う習慣があれば、我慢し続けて感情が爆発することもありません。建設的なコミュニケーションの練習にもなるので、ぜひ遊び感覚で取り入れてみてください。「子どもだからわからない」と思っていたことも、「こんなにしっかり考えていたの?!」と驚きますよ(笑)。
読者にメッセージをお願いします
私は、子どもから「ママ、大好き!」と愛情表現されると、どんなにへこんでいても他のことはどうでもよくなって、「あー生きていて良かった!」と心から思えるんです。毎日のように、子どもから無条件の愛情と感動を与えられて、親は幸せだなぁって。
子育ては、手間はかかるけれど、素晴らしいこと。どんな親でも自信と誇りを持って、お互い子育てを楽しんでいきましょう。