保育の現場にたずさわる中で、子どものための音楽を作詞作曲するほか、保育士資格を持ったアーティスト集団“キッズスマイルカンパニー”としても活躍中の吉澤隆幸さん。音楽を通して、子どもたちはどのようなことを得られるのでしょうか? 吉澤さんへのインタビュー後編では、音楽が子どもだけでなく、親の力にもなってくれることを教えていただきました。
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吉澤 隆幸さん
有限会社キッズスマイルカンパニー代表取締役。池尻かもめ保育園園長。16歳より声楽を習い始め、オペラ、オペレッタの舞台を経て、群馬県高崎市で初の男性保育士となる。保育士をつとめながら、子どものための音楽の作詞作曲を始め、1999年、子どもの遊びをプロデュースする男性保育士ユニット「キッズスマイルカンパニー」を結成。以来、幼稚園保育園などのイベント、コンサートに多数出演。保育者への研修も行う。手がける保育ソングは全国の保育の現場で取り入れられている。
キッズスマイルカンパニー:http://kidssmilecompany.com/
親子コンサートに参加する親子は、みなさんとても楽しそうです
子ども向けの音楽ですが、お父さんお母さんもとっても楽しんでくれて「普段、子どもといかにふれあっていないか気づいた」「ちょっとふれるだけで、子どもがこんなに喜ぶなんて…」といった感想を多くいただきます。
最初はぎこちないお父さんお母さんも、子どもと一緒に歌ったり体を動かしたりしていくうちに、少しずつにこやかになっていきます。
「ぎこちない」のは、なぜそうなるのでしょうか?
普段、親が忙しかったり、子どもと遊ぶのが苦手だったりして、子どもといつでもふれあえる関係性を築くことができていないケースが多いです。
そうはいっても、親は毎日本当に忙しいので、毎回毎回、子どもにかまってあげるのは難しいでしょう。そんなときは「昨日はちゃんと向きあえなかったから、今日こそは、少しでも子どもと向きあえるようにしよう」と意識するだけでも、全然ちがうと思いますよ。
子どもとの遊び方がわからないというお父さんお母さんは、思いきって、自分も子どもの目線まで下りてみるといいと思います。
たとえば、私たちの音楽遊びに、『よぉーっ』というかけ声に合わせて、変顔を見せ合ってにらめっこ勝負する曲があります。子どもはもう大喜びだけど、お母さんはすごく恥ずかしい(笑)。そんなとき、親も思いきって子どもと一緒に変顔をしちゃうほうが、親もずっと楽しいんですよ。
音楽にのってしまえば、大人も子どもの世界に入りやすいですね
その通りで、子どもとのかかわり方がわからない親にとっても、音楽は力になってくれます。
1日に5分でいいから、「今日はお歌を1つ、一緒に歌おうか」と音楽をきっかけにして、親子が少しでもふれあってもらえたらうれしいです。
音楽から、子どもたちはどんなことを得られるでしょうか?
子どもの可能性が広がると思います。
音楽には、たとえば日本の盆踊りのようなリズムもあれば、明るく陽気なサンバにマンボ、優雅なワルツもあって、リズムや旋律によってまったくちがう感覚になれたり、まるでその土地を訪れたような気分になれたりと、さまざまな世界を体感できる楽しさもあります。
多様なリズムにふれることで視野が広がるし、感性も豊かになります。子どもたちには、音楽を通して、あんな世界、こんな世界もあるよと、たくさんの世界を体験させてあげたいと思っています。
読者にメッセージをお願いします
お母さんたちは、すでにいろんな情報を知っていて、いろんなことをわかっていて、それでも悩んでしまうんですよね。そんなお母さんたちに私から言えるのは、親も子どもと同じ目線になって、子どもと一緒に楽しんでほしいということ。
子どもと一緒にお腹の底から笑ったり、不思議がったり、びっくりしたり。それこそが、子育ての一番の楽しさだと思いますよ。
(おしまい)