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もしかしたら私は被害者? 本人も気づきにくい夫婦間の性暴力とは【ママのこまりごと・前編】

身体的暴力や言葉の暴力、経済的な暴力がDVとして問題視される中、取り沙汰されることが少ない「夫婦間の性暴力」。声をあげることができなくても「夫婦なら受け容れなければいけないの?」「したくないのに夫が怖くて拒めない」と、一人で悩み苦しんでいる女性も多いのではないでしょうか。

ママの悩みや心配ごとを取り上げていくこのコーナー、今回は“夫からの性暴力”に焦点を当て、DVや虐待などによるトラウマからの回復をサポートする「NPO法人レジリエンス」にお話を伺いました。前編では、なぜ夫婦間の性暴力が起きてしまうのか、また、実際どのようなケースがあるのかについてお届けします。

NPO法人レジリエンス
さまざまな原因による心の傷つきやトラウマから回復するための支援活動に取り組み、各地で講演や研修、講座(東京・横浜)を開催しています。
公式サイト:http://resilience.jp/

 

そもそも、性暴力とはどういうものなのでしょうか?

広くいえば、性的な言動により相手を不快にさせたり、心身を傷つけたりする行為のことです。レイプ(セックスの強要)をイメージされる方が多いと思いますが、他にも、避妊しない、性的な部分を傷つけられる、中絶の強要、性病感染、ポルノを無理に見せる、セックスを拒否できないようにするなど、様々な種類があります。

 

夫婦間の性暴力に特有の問題はあるでしょうか?

こうした性暴力が夫婦間で起きた場合、“暴力”と認識されにくいことです。社会ではいまだに「結婚していたら性暴力は成り立たない」「妻なら許される」などと考えられ、被害者である妻も、暴力を受けている自覚がないまま悩み続けているケースや、仕方がないとあきらめて受け容れてしまうケースが後を絶ちません。問題が隠されてしまうがゆえに、被害が続いているのです。

夫婦間性暴力は何年間も継続し、長期にわたり被害者を苦しめます。度重なる中絶などによる身体の傷、何より、心に受ける傷ははかりしれません。

 

なぜ、こうした問題が起きてしまうのでしょうか

夫婦や個人の問題と捉えられがちですが、実は歴史的・社会的な背景も絡んでいます。

ちょっと難しい話になりますが、とくに大きな影響を与えているのが、明治時代に規定された「家制度」です。婚姻により女性は男性の家に入るとされたことから、妻は夫に従属するものと考えられるようになり、制度が廃止された今も、ドメスティック・バイオレンスや夫婦間性暴力の土壌になっていると指摘されています。

夫婦間性暴力の被害をなくしていくには、そうした背景も含めて、私たちが理解していくことが必要なのだと思います。

 

実際、夫婦間の性暴力にはどのようなケースがあるのでしょうか

いろいろですが、たとえば、性行為を拒むことによって生活費をもらえなくなる、経済的な脅しを受ける、暴力をふるわれるといったケースや、性感染症をうつされる、中絶を繰り返す方もいます。

ご高齢の方から「長年苦しめられてきて離婚したいけれど、経済的に難しく、とても辛い」と相談を受けることも多いです。また、DVの相談に来られた方で、こちらから聞いてみて初めて、実は性暴力も受けていると打ち明ける方もいらっしゃいます。

性の問題、それも性暴力となると、誰かに相談するだけでも非常にハードルが高く、声を上げられない方がたくさんいます。相談しても、理解のない対応をされ、さらに傷ついてしまう二次被害も深刻です。(後編に続く)

 

後編では、夫婦間で改善・予防するにはどうしたらいいか、被害にあっている方へのアドバイスを伺います。

心が傷ついたときに読みたい本
「傷ついたあなたへ わたしがわたしを大切にするということ」
著:NPO法人レジリエンス 発行:梨の木舎

DVや性暴力、あるいは他の何かに心が傷つけられたときに手にとってほしい、トラウマから回復するための実践的なワークブック。DV経験者の著者が語りかける、温かな言葉にも癒されます。誰にも相談できなくて、一人で悩んでいる方にもおすすめです。

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