筑波大学教授の徳田克己先生が、ママの子育てに関する悩みに答えてくれるコーナー。
災害時は怖がらせるより安心を
地震や台風の際には、子どもに自分を守る行動を取ってもらいたいですよね。でも、テレビの災害映像を見ながら「ちゃんと逃げないと死んじゃうよ」「地震が起こったら、パパやママの言う通りにしないとケガするよ」といった一般論や抽象論を言って聞かせても、幼児は心細くなるだけです。実際に災害が起こったときに役に立つアドバイスにはなりません。
災害ニュースから命の尊さを学べるのは、小学校3・4年生になってから。幼児にとって、テレビで放映される災害の映像や「死んだらママやパパに会えないんだよ」という親の言葉は、よくわからないながらも自分にも同じことが起きるような恐怖を与えてしまいます。
災害を目にした子どもたちに必要なのは、しつけではなく安心です。不安になると、子どもたちは大人に甘えます。できるだけ叱らず、甘えを受け止めてあげてください。そして子どもを早く「日常」に戻してあげてください。子どもの日常とは、「遊ぶこと」です。
具体的に伝えることが大事
では、どうすれば災害時に適切な行動が取れるのでしょうか。
災害ニュースの、あまりに被害がひどい映像は幼児には見せないほうがよいでしょう。今までの災害でも、そんな映像を見た幼児が精神的に不安定になったり、夜泣きが続いたことがありました。
もし目にしてしまった場合には、「死ぬ」とか「ケガをする」といった話はせず、「地震が来たら机の下に行ってクッションで頭を押さえるんだよ」「揺れるのがおさまったら、○○公園に行ってママが来るのを待って」など、具体的にどうすればよいかを話してあげてください。
さらに大事なのは予行演習。小さな子どもは1〜2回でも練習をしておかないと、いざというときに行動できません。パパ・ママが真剣に予行演習をすると、子どもも「大事なこと」として取り組むはずです。できたら「上手にできたね」と褒めてあげてください。
非常食や飲料水、携帯トイレなど備蓄している家庭も多いでしょう。それらを年に2〜3回、食べたり、使ってみる経験も大切です。具体的な経験は、子どもも楽しんで取り組みますし、そのたびに適切な行動を確認できます。
子どもはいずれ大人になります。小さい頃、親から教えられた「非常時の対処法」は、大人になっても記憶に残ります。「自分や家族の命を守るため、具体的に何をすればよいのか」を子どもに伝えることは、「親の重要な仕事」なのです。
漫画・イラスト:國友裕