主に母親が1人で(ワンオペレーションで)家事・育児をこなす「ワンオペ育児」。「うちのことだ」というママは少なくないはず。
今回は、ワンオペ育児の実情に詳しい社会学者の藤田結子さんに、そもそも、なぜワンオペ育児になってしまうのか、改善のためにはどうすればいいかを伺います。
後編では、家事育児をしない夫に、妻はどうすればいいのか、アドバイスをいただきます。
前編はこちら:ワンオペ育児でへとへと。夫はなぜ家事育児をしないの?【ママのこまりごと前編】
藤田 結子さん
明治大学商学部教授。専門は社会学。調査現場に長期間参加し、観察やインタビューを行う研究法を用い、文化、メディア、若者、ジェンダーなどについてフィールド調査をしています。4歳の男の子のママ。
ワンオペ育児の弊害として、妻の過負担の他にどんなことがあるのでしょうか
夫が家事育児をしない場合、将来、妻が親の介護を一人で背負う可能性が高くなります。また、妻が育児家事を負担して仕事を制限する結果、妻は経済的ハンディを負うことになり、たとえば、離婚するとなったときのリスクも高くなります。
ワンオペ育児は、子育て期だけの問題ではありません。将来を見すえて、今から改善していく必要があるんですよ。
改善のために、家庭でできることは何でしょうか
まずは、父親に家事育児を分担するよう「伝える」、手や口を出さないで「まかせる」を徹底しましょう。
言わないことには何も変わらないし、自分がやったほうが早い、夫のやり方が気に入らないからといって、妻が手を出してしまうと、夫はやらなくなってしまいます。
家事は、食事の支度のように今すぐ必要なものではなく、お皿洗いや洗濯など、時間を選ばないものを夫に任せるといいと思います。
また、夫が1日、ワンオペ育児をするのも有効ですよ。実際に体験してみれば、その大変さを理解できますから。
言ってもなかなか変わらなくて、言うのが疲れてしまうことも…
時間はかかると思います。それでも大事なのは、あきらめないこと。あきらめたら、損をします(笑)。
それに、先ほども申し上げたように、ワンオペ育児は今だけの問題ではありません。長い目で見れば、時間がかかっても、変えていったほうがいいと思いますよ。
実際、伝え続けることで夫が変わる例もたくさんあります。
夫が育児をすることで、子どもにも影響はありますか?
大いにありますよ。ワンオペ育児というと、妻の負担にスポットが当てられることが多いですが、子どもだって、いつも母親とばかりでは息詰まってしまうし、母親とうまくいかなくなったときに、行き場がなくなってしまいます。
子どもにとっても、母親だけでなく、父親や、おじいちゃん、おばあちゃん、親戚の人やご近所さんなど、いろいろな人たちとかかわることで、視野が広がり、自立も促されるなど、良い影響がたくさんあります。
子どものためにも、ぜひ、父親にも子育てをしてほしいですね。
最後に、読者にメッセージをお願いします
そもそも、育児も家事も、仕事も、一人でこなすのは不可能です。今の状況は、現代の日本だけの特殊な状況なのです。中国では親戚みんなで子育てしているし、欧米ではシッターや保育サービスに頼っています。
お母さんは、両立できないからといって自分を責めることはないし、これ以上がんばることはありません。夫の協力を得るのが難しい状況であっても、地域の支援や民間のサービスを利用するなどして乗り越えましょう。
お母さんには、もっと手を抜いて、人の手もどんどん借りて、解決していってほしいなと思います。