高齢出産の増加を背景に、育児と介護を同時に行う「ダブルケア」をする人が増えています。この問題に、ママはどう対処すればいいのでしょうか?
介護者メンタルケア協会代表であり、ご自身も、重度身体障害者の母親と知的障害者の弟、認知症の祖母、家族3人のトリプルケアをしてきた橋中今日子さんに2回にわたってお話を伺っています。
後編では、当事者ママの負担を少しでも軽減するために、今できることは何か、アドバイスをいただきます。
前編はこちら
育児に加えて親の介護も?! どうする?ダブルケア【ママのこまりごと前編】
橋中今日子さん
介護者メンタルケア協会代表。理学療法士として病院勤務しながら、認知症の祖母、重度身体障害の母、知的障害の弟を22年間一人で介護。現在、メンタルコーチとして介護関係者の心身をサポートする活動を行う。
介護者メンタルケア協会 http://kyonchankaigo.com
孤立しないためには、どうすればいいでしょうか?
とにかく1人で抱えこまないことです。
制度が足りていないからこそ、周りに助けを求めていくことが必要です。誰かに話す、相談することで、心がとても軽くなるし、必要な支援やサービスに結びつくこともあるなど、状況は少しずつ変わっていきます。
ただ、いきなり夫など身近な人に相談すると「なんでわかってくれないのよ!」と怒りをぶつけてしまいがち。最初は地域包括支援センターや子育て支援センター、職場なら人事総務部など、「自分から遠いところ」に相談するのがいいと思います。
相談するときは、どんな風に伝えればいいのでしょうか?
自分の素直な気持ちを伝えましょう。私も、上司に「辞めてもらえないか」と言われたときに、「もう限界です」「でも家族で働いているのは私だけ。仕事を辞めたらお金に困るんです」と、正直に伝えることができた時に初めて、上司が「何がどう大変なのか、言ってくれないと助けようがないよ」と親身になってくれました。状況説明も必要ですが、本当に困っていることを伝えるには、気持ちを伝えるのが一番なのです。
気持ちを伝えるのは、なかなか難しいです…
ほとんどの人が、状況説明はできても自分の感情を伝えるのが苦手です。それは、自分で自分の感情を把握していないから。まずは、自分の気持ちと向き合ってみましょう。
「私はなぜイライラしているのかな、何が悲しいんだろう?」「周りにわかってもらえないから、子どもに負担をかけている気がして不安だから、体が疲れきっているから」というように、自問自答を繰り返してみてください。
「すべて投げ出してしまいたい」「親のことが疎ましい」など、目をそむけたくなるような感情があっても、自分を責めないでくださいね。感情に善悪はないので、否定しないで受け容れてあげましょう。
「イライラ」「モヤモヤ」は、「気づいて!」の心のサイン。「こんな気持ちもあったんだね」と自分の気持ちに気づいてあげると、気持ちは落ち着いていきます。自分の感情を把握できるようになれば、突然爆発することもないし、相手にも伝えられるようになりますよ。
周囲の理解ない反応に、かえって傷ついてしまうこともありそうです
せっかく行動を起こしても、思いやりのない態度や迷惑そうな反応が返ってきて、傷ついてしまうこともあると思います。ただ、育児や介護を経験したことのない人が、ダブルケアの大変さを理解するのはなかなか難しいのも事実。1回でうまくいかなくても、あきらめたり、落ちこんだりしないでほしいなと思います。
職場であれば、同僚とのランチタイムを活用するのもおすすめです。嫁姑の問題や子育ての悩みなど、いろいろな話題がのぼる中で「うちもこの間お母さんがね…」という風に、少しずつ状況を伝えるようにしていくと、「そうなんだ、〇〇さんとこも大変ね」と、周りも受け容れやすいですよ。
いつまで続くのか、介護は先が見えないのが不安です
「ずっと続く…」と考えるよりも、たとえば、子どもが小学校に上がるまで、次は低学年まで、と短いスパンで考えるようにしましょう。
その時に「どんな支援、サービスがあればいいかな?」と考えて周りに相談していけば、その時期に適切な支援制度・サービスが見つかります。時には家事代行や配食サービス、ママ・パパの会社の制度も活用しながら、乗り越えていきましょう。
ママたちにメッセージをお願いします
育児も介護も、自分だけ、家族だけでどうにかしようと思わないで。周りを頼りながら、もっと楽に乗り越えていきましょう。