健康

なかなかオムツが取れない【コドモカルテ】

トイレトレーニングは急がなくて大丈夫

「うちの子、まだオムツが取れないのですが、大丈夫ですか?」と相談されることがあります。

周りから「うちはもう取れたよ」「早くはずさないと」などと言われたり、早期のオムツはずしを勧める書籍やグッズを目にすると、焦ったり、親の怠慢ではないかと不安になってしまいますね。

しかし、トイレトレーニングを急ぐ必要はありません。トイレトレーニングは、3歳頃までにはじめ、1~2年間続けているうちに自然とオムツが外れ、4~5歳頃にはだいたいの子がトイレで排尿できるようになる、という流れが理にかなっています。

その理由をわかってもらうため、まずは、私たちの尿が出る仕組みから見ていきましょう。

尿は、腎臓でつくられます。全身をめぐった血液を、腎臓にある「ネフロン」というふるいのような役割の組織でこしてできるのが、「原尿」。「原尿」には、老廃物だけでなく、必要な成分も含まれているので、必要な成分のみを再び血液に戻し、尿ができます。

しかし、この尿はまだ薄い状態です。そこで、働くのが、脳の下垂体から分泌される抗利尿ホルモン。抗利尿ホルモンの働きで尿が濃縮されることで、量が減らされるのです。その後、尿は尿管を通って、膀胱へためられます。膀胱の尿がいっぱいになると、神経を通して脳に「尿意」が伝わります。そうして、私たちはトイレへ行き、膀胱括約筋を開いて膀胱壁を収縮させ、排尿をするのです。

このようなスムーズな排尿は、生まれてすぐできるわけではありません。乳幼児はとても頻繁に排尿します。その理由は2つ。1つめは、「抗利尿ホルモンの分泌量が少なく、薄い尿がたくさんできてしまうから」。2つめは、「膀胱のサイズが小さく、すぐにいっぱいになってしまうから」です。

乳児期の排尿は「反射的排尿」と呼ばれ、膀胱にある程度尿がたまったら意識せずに出しています。新生児期には1日15~20回ほども排尿しますが、1歳頃になると、膀胱に尿をためられるようになり、8~12回くらいに減ります。その後、2~4歳くらいになると、「膀胱がいっぱいになった」というサインが脳に伝わるようになり、尿意を大人に知らせられるようになります。そこで、トイレに行くことを促すなど、トイレトレーニングがはじめられるわけです。排尿回数は1日5~9回くらいです。さらに、4~5歳になると、自ら尿意を認識し、トイレに行けるようになります。排尿回数は4~8回まで少なくなります。

その子のペースに合わせて無理なく進めよう

つまり、「子どもが自分からトイレに行く」とは、年齢を重ねて成長し、膀胱が大きくなって尿をためられるようになり、抗利尿ホルモンの分泌が増えて尿が濃くなり、尿意を認識してトイレに行こうと思う、という、いくつものプロセスを経て初めて可能になります。もちろん個人差もあります。ですから、その子のペースに合わせて、無理せず進めてください。

SNSなどでは、0歳からオムツの外で排泄させる「おむつなし育児」に取り組む人もいますが、小児科医から見て、子どもの発達や成長にとって良い根拠は特に見当たりません。保護者本人が望んで実践するのなら問題ありませんが、くれぐれも無理はしないで大丈夫です。トイレトレーニングは、焦らず、子どもの発達に合わせて適切な時期に行いましょう。

森戸 やすみさん

小児科専門医。一般小児科、NICU(新生児集中治療室)などを経て、どうかん山こどもクリニックを開業。著書は「小児科医ママが今伝えたいこと!子育てはだいたいで大丈夫」等多数。

一覧へ戻る
クルール会員登録

関連する記事

カテゴリ一覧

公式インスタグラム