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非認知的能力について【汐見先生のうまれて、よかった。】

今、世界の国々は急いで幼児教育の改革を進めている

前回、早期教育はたいして意味がないということをお話ししました。実は世界の国々が保育とか幼児教育の改革を進めているのですが、それは文字や数という認知的能力(学力がモデル)を早期からというのではなく、もう一つの知的力である非認知的能力を伸ばそうとしているからなのです。

非認知的能力とは何でしょうか?人間の考える営みは、大きく二タイプあります。一つは答えが決まっている問いを考えるということです。正解がある問いを考えるといっていいでしょう。学校の勉強がそのモデルになります。学校の勉強は、これが正しいこと、理解すべきこと、覚えておくべきことという中身が決まっていて、その問いを解く練習を主にしています。その正解度が高い人が「優秀」とされます。

学校と違い、社会では正解のない問いだらけ

それに対して、世の中に出ると、答えが決まっていない問いだらけになります。正解のない問いだらけといってもいいでしょう。会社の売れ行きが落ちている。何等かの原因があるはず。それを解明しなければなりませんが、どこかに正解が落ちているわけではありません。家族でどこに旅行するか、ここにも正解はありません。わが子が不登校に!どう対応すればいいか、正解はやはりなし。

正解のない問いを考えるときは、あれこれ条件を考えて、みんなが最も納得する適切な解を導き出すことが課題になります。そのために懸命に考え、必要に応じて相談し、新たなアイデアを思いつき…という試行錯誤を繰り返さねばなりません。この過程で身につく知的な力、すなわち試行錯誤力やデザイン力、アイデア力、相談力、コミュ力等を、非認知的能力といっているわけです。

大事なことは、社会に出ると認知能力だけでなく非認知的能力の豊かな人がいい仕事をし、人間的にも信頼されていることがわかってきたことです。そこで世界の国々は、この非認知的能力を育てるような教育に大急ぎで変えつつあります。特に乳幼児期には、豊かな遊びの体験が大切になってきたのです。


前の記事:早期教育の是非【汐見先生のうまれて、よかった。】

汐見 稔幸さん

一般社団法人家族・保育デザイン研究所 代表理事。東京大学名誉教授・白梅学園大学名誉学長・全国保育士養成協議会会長・日本保育学会理事(前会長)。専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。初代イクメン。父親の育児参加を呼びかけた「父子手帳」の著者。ユーモラスでわかりやすい語り口の講演は定評があり、保育者による本音の交流雑誌『エデュカーレ』編集長や持続可能性をキーワードとする保育者のための学びの場『ぐうたら村』の村長でもある。NHK E-テレ『すくすく子育て』などメディアへの出演も多数。

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