
「母乳?」「靴下は?」知らない人からの声かけ
赤ちゃんを連れて街に出ると、親になる前とはまったく違って、知らない人から声をかけられることが急に増えますね。「かわいいですね」といった声かけなら、気にならず、むしろうれしい気持ちになる保護者が多いでしょう。
戸惑うのは、「母乳?」といきなりプライベートな質問をされたり、「足が寒そうよ、靴下を履かせなさい」といった、命令形での口出しを突然される場合です。
こういった声をかけてくるのは、往々にして、祖父母世代の年配の方たち。良かれと思ってアドバイスしてくれる内容が、「昔は常識だと思われていたけれど、今となっては迷信でしかない」こともよくあります。たとえば、「子どもが熱を出したら温めるといい」や「抱っこをしすぎると抱き癖がつく」などは、今では否定されていますが、アップデートされていない、かつての常識をもとにアドバイスされることも多いでしょう。
親になると、育児情報についてアンテナの感度が高くなり、だいたいの人は熱心に学びます。当事者ですから、当然のことでしょう。祖父母世代もかつてはそうだったのでしょうが、時代が変わり、現代の育児知識とは合わなくなってしまったのです。
身内からのありがた迷惑なアドバイスは断りにくい
声をかけてくるのが、外で出会っただけの他人なら、逃げられる分、まだいいかもしれません。私は小児科で診察していて、「母(もしくは、父、義母、義父など)にちゃんと診てもらいなさいと言われました。私は大丈夫だと思うんですが……」と子どもを連れてくる親に何度も出会ったことがあります。診察してみると、普段子どもを近くで見ている親が感じた通り、確かにまったく問題ないのです。
おじいちゃんやおばあちゃんも孫のことが心配で、善意から受診を勧めるのでしょうが、身内である祖父母世代に間違ったアドバイスをされると、ぎくしゃくした関係になりたくないので、親としても困ってしまいますね。
口にする前に一度「大きなお世話かも」と考えて
これらは、アドバイスをする、祖父母世代の側の問題です。
育児はとてもナイーブで、個人的な体験です。保護者や家庭、子どもごとに事情は違い、外から見た人が安易にアドバイスをしていいものではありません。「自分はこうしたらうまくいった」と教えたい、家族なのだから助言したいのはわかりますが、自分がうまくいったからといって、ほかの家庭に当てはまるとは限りません。
ましてや、赤の他人が求められていないアドバイスをしたくなったら、口にする前に一度「大きなお世話かも」と考えてみましょう。
では、アドバイスをされる側、親世代からは、どんな対策を取ればいいのでしょうか。私は、以前『祖父母手帳 もう孫育てで悩まない!祖父母&親世代の常識ってこんなにちがう?』(日本文芸社)という書籍を監修しました。「今の育児がどうなっているか」「どんなふうに声をかけたらいいか」を伝える一冊です。こういった本を読んでもらうのもひとつの手です。また、アドバイスをされても受け流してスルーしたり、適度に反論して距離を保つのもいいでしょう。
それも難しいようなら、そもそも会わない、接触の機会を減らすのがいちばん。なるべくストレスのかからない方法を考えてみてくださいね。