Q.こんな時どうする?「お腹の風邪ですね」と言われたら
「お腹の風邪」「嘔吐下痢症」 同じもの?違うもの?
小児科で「お腹の風邪ですね」と言われることがあります。
これは医学用語では「急性胃腸炎」のこと。ウイルスや細菌が消化管に入って炎症を起こすことで、胃や腸の動きが悪くなり、お腹が張ったり、気持ちが悪くなって吐いたり、下痢をしてしまったりする状態です。熱はある時もない時もあります。この「急性胃腸炎」、症状に着目して「嘔吐下痢症」と呼ぶ場合もあります。つまり、「お腹の風邪」と「嘔吐下痢症」は同じものなのです。
「鼻水も出ていないのに風邪?」と不思議に思うかもしれません。「風邪」というのはとてもよく使われる言葉ですが、何を指しているかは医師によってニュアンスが違うことがあります。「お子さんは急性胃腸炎です」と伝えると、重大な病気だと思われるかもしれないので、「お腹の風邪」と伝える医師もいる、ということです。
特効薬はありません治療は脱水の予防と改善が中心
何度かの嘔吐と下痢(発熱や腹痛があることも)があって、40℃以上の発熱や血便がなければ、おおむねウイルス性の急性胃腸炎だと思っていいでしょう。
毎冬のように流行する急性胃腸炎の原因代表といえば、ノロウイルスとロタウイルス。予防を心がけたいところですが、ロタウイルスにはワクチンがあります。ロタウイルスワクチンは口から飲む経口ワクチンで、2020年10月から定期接種になりました。ロタウイルスは5歳以下の子どもがかかると15人に1人が入院する、リスクの高い感染症。しっかり接種したいですね。
原因がロタウイルスでもノロウイルスでもその他のウイルスや細菌でも、もし感染してしまったらよく効く薬はなく、自然治癒を待つしかありません。「できれば吐き気止めや下痢止めの薬だけでも…」と思ってしまいますが、お腹の風邪に吐き気止めや下痢止めの薬は効果がなく、イレウス(腸閉塞)の危険があるため、生後6カ月未満には絶対に使ってはいけないことになっていますし、2歳未満にも原則禁止。お腹の風邪は多くがウイルス性なので、抗菌薬(抗生物質)も効果がありません。
そのため、治療は脱水の予防と改善が中心。下痢や嘔吐を繰り返すと水分を喪失するので、こまめに水分補給をしましょう。脱水の目安としてわかりやすいのは「お腹の皮膚」。健康な子はお腹の皮膚をつまむとすぐに元に戻りますが、中等度の脱水の場合はお腹のシワが戻るのに少し時間がかかり、重度の脱水だと2秒以上かかります。脱水が見られず元気があれば、すぐに受診しなくても大丈夫。
中等度以下の脱水には、点滴と同じくらい効果がある経口補水液(OSー1など)を飲ませましょう。味を嫌がる場合には、りんごジュースを水で2倍に薄めたものでも。
お腹が痛い時は、温めると少しラクになるようです。温めた濡れタオルをビニール袋に入れる、使い捨てカイロや湯たんぽをタオルで包むなどしてお腹に当ててあげると、お子さんの気持ちもほっと安らぐと思いますよ。