
人類の歴史で非認知的能力を育てたのは親ではなかった
現代の子育ては、人類20万年の歴史の中でも、母親の負担感がもっとも大きなものになってきています。どうしてでしょうか?
育児はいくつかの課題というか側面をもっています。
一つ目は、きちんと子どもに栄養を与え、睡眠をとらせ、病気を防ぎ、病気になったら治療をする等、からだを丈夫に育てるという課題です。
二つ目は、子どものやることに常に温かいまなざしを送り、失敗しても「痛いの痛いの飛んでイケ!」と言って、何があってもあなたを守るよ、というメッセージを送り続けることで、子どもの心を育てることです。
三つ目は、初歩的なしつけをすることです。お箸の持ち方、挨拶の仕方など、世間の論理を少しずつ伝えてできるようにすることです。
四つ目は、頭と心と体を活発に使い、運動技能、興味関心、五感の機能、思考力や判断力、コミュ力等、前回述べた非認知的能力を育むことです。
このうち三番目までは親が責任もってできますし、すべきことといえます。しかし四番目はどうでしょうか。実はこの四番目、これまでの人類の歴史では、親が育てたものではありませんでした。子どもたちは、家の周囲の地域で群れて遊び、いつの間にか自分で身につけたものでした。この力が豊かに育っていたからこそ、社会に出たら仕事等にそれを活かせたのです。つまり子どもは家庭と地域社会と二つの場で育ってきたのです。ところが今はどうでしょう。四番目を育てる地域社会はもうありません。その課題を母親に課したら、育児項目が増えすぎて、子どもを産むことをもう止めようとなるでしょう。そんな大変なことできない!です。で、少子化が起こります。
そこで、これからの育児では、この地域社会での育ちを保育園が担い、そこで育ててもらうことが大事な課題になります。誰でも通園制度が間もなく始まりますが、保育園を上手に活用することがこれからの育児で大事なことになるのです。これからは、専門家を信頼して、できるだけ早くから保育の場を利用しましょう。



