MIT修士卒業と同時に、子ども向けのオンライン授業サービスで起業した前田智大さん。このサービスで実現したい、日本の教育改革とは、どのようなものでしょうか。起業のきっかけや、ご自身の幼少期や中高生時代についてもお話を伺いました。
「必修」が増えると、自分で 選択して学ぶ機会は減る
最初は、高校生向けの大学受験のための教育サービスを始めようとしていたんです。しかし、そこで接した高校生たちと話して、考えが変わりました。出会った高校生たちはみんな、進学校に通っていて、能力も高い。でも、「いい大学に行きたい」という気持ちは持っているけれど、心の底から納得していないので、やる気がでなくて苦しんでいる。学校や塾から与えられる、受け身の教育に慣れすぎて、自分の興味関心を軸に何をしたいのかを考える経験が少ないからではないでしょうか。
たとえば、小学校ではプログラミング教育、高校では「総合的な探究」が必修化されました。どちらも大切な教育ですが、「必修」が多すぎると、その分自ら選択して学ぶ機会は少なくなります。
AIにセンター試験の問題を解かせると、高校生の平均よりも上の点数を叩き出します。せっかく時間をかけて学びながら、機械に代替されるようなスキルしか学べていない、ということです。それってもったいないですよね。
思えば起業のきっかけも、アメリカの大学で学んだ経験から「アメリカでは興味のあることに対して主体的に向き合う人が多い」と感じ、「日本の子どもの興味を育てたい」と考えたからでした。
探究心や自主性を伸ばすには、「自分で選ぶ経験」が必要。そう考えて、小学生向けに、たくさんの中から自由にクラスを選べる「スコラボ」を始めたんです。
「めちゃくちゃ頑固」 だった、子ども時代
私には双子の弟がいるんですが、子どもの頃はずっと2人で、走るのもゲームも勉強も、何から何まで「勝った」「負けた」の競争をしていました。身近にライバルがいた分、途中で満足せず、何事にも努力できたんでしょうね。
実は両親は私が小4になるまで「中学受験」というものの存在を知らなかったのですが、「地元の中学校は荒れているし、試しに…」と中学受験塾の体験に行ってみたらこれが楽しくて、兄弟揃って通うことになりました。
私の幼少期のことを両親に聞くと、「めちゃくちゃ頑固だった」そうです。遊びに行って「帰らない」と駄々をこねて、置いていかれてしまっても、そのまま泣かずに待っているような子。両親に感謝しているのは、私が納得するまで待ってくれたことです。自分がしっかり納得したことはモチベーションを保ちやすく、学問でも課外活動でも結果に繋がったと思っています。
本音を言えば、小学校も、中学・高校も、楽しい授業は一握り。後は、過ぎるのを待つ時間でした。でも、中には本当にワクワクする面白い授業があって、これを大学でさらに学べると思えば、その他の受験勉強にも身が入ったことを覚えています。
そんな夢中になれる経験を広く届けるため、今は小学生向けですが、幼児や中高生向けにもサービスを拡大していきたいですね。
「宇宙人に地球を説明しよう!」「自分だけのMinecraftを作ろう」「お金が世界からなくなるとどうなる?」といった80ものクラスから、子どもの興味に合わせて選んで受講できる、少人数参加型オンライン授業サービス。主な対象は小学生、1回から受講可能。