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比べない、好きなことを一緒に見つける【汐見先生のうまれて、よかった。】

親に求められる資質は切り替えられる能力

前回は、子育ては一人でしない、孤立はダメ、誰かに頼ることが肝要、といいました。今回は、子育ての実際の原則についてです。

子育てには正解のやり方、つまり誰でもどこでもこうすれば必ずいい子に育つ、というようなやり方はありません。その子その子に応じてふさわしいやり方を見つけるのが子育てです。その意味では観察力が大事になります。

しかし、いつも大事にすべき原則はあります。

その一つが、誰かとわが子を比べて育てない、ということです。

支援センターに連れて行ったら、同じ月に生まれた子なのにハイハイがわが子より上手、焦った、とか、○○ちゃんはもう三輪車乗れているのに、わが子は全くダメ、うちの子遅れているのかしら、等々、焦ることってありませんか。私自身、初めての子のときはそういうことがあってちょっと焦りました。

でも、二人目、三人目と育てていくうちに、子どもの育ちは、小さいうちはものすごく個人差が大きくて、そのうちにその差はかなり埋まっていくということを学びました。

それ以上に、子どもの個人差を大事にすることがとても大事、ということもわかりました。個人差が大事、というのは、子どもには、兄弟姉妹であっても、得手、不得手がかなり違うということをしっかり認め、その違いをその子の個性の芽として大事にする、ということです。得手になっていくのはその子の好きなことです。

たとえば、小さい頃から跳び上がったり降りたりが大好きというような子は、大きくなると運動が好きになる可能性は大、といえますが、小さい頃から、歩き出すのも遅かったし、ボール遊びもしたがらなかった、という子は、運動が得意になる確率はあまり高くない。それは資質の違いで、それを無視すると無いものねだりになります。

それよりも、運動タイプでないなら、他の世界で好きなことを見つけさせてあげよう、と切り替えることが親に求められる資質なんです。端的に切り替え能力、見切り能力、これが親に必要なんですね。


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汐見 稔幸さん

一般社団法人家族・保育デザイン研究所 代表理事。東京大学名誉教授・白梅学園大学名誉学長・全国保育士養成協議会会長・日本保育学会理事(前会長)。専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。初代イクメン。父親の育児参加を呼びかけた「父子手帳」の著者。ユーモラスでわかりやすい語り口の講演は定評があり、保育者による本音の交流雑誌『エデュカーレ』編集長や持続可能性をキーワードとする保育者のための学びの場『ぐうたら村』の村長でもある。NHK E-テレ『すくすく子育て』などメディアへの出演も多数。

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